弾きなおしをしない

ピアノの音を間違えると、弾きなおしてその間違いを訂正したくなりますね。
練習の段階では訂正しながら正しい音を覚えて体に叩き込まなければなりませんが、仕上げの段階では「弾きなおしをしない!」と伝えています。
弾きなおすのはわざわざ聴いている人に、間違えました!と教えているようなものだから、通して弾いている時には絶対に弾きなおさないのです。
でもついやってしまう。
これが人間の習性というものです。
間違った音を瞬間的になかったことにしたい、正しい音に置き換えたい、と思うのが当然でしょう。
特に経験が未熟な子どもたちにとって、弾きなおしをせず弾き通すのは至難の業とも言えます。

間違った音をそのままに通り過ぎるのは、間違った事実を瞬間的に受け入れなければならないことだと思います。
押し通せるか通せないか、それは演奏の流れや技術的な問題もあるので、一概には言えないことですし、弾きなおさなければリセットできない場合ももちろんありますが、ミスしたことを受け止める柔軟な心が演奏に要求されている気がします。
ミスをすると悔しいですよね。
いつもはできているのに、よりによってなぜこの時に?という場面でミスをしてしまいます。
でもそれは、傷をさらに深くすることになりかねません。
大切なのは、傷のない演奏にこだわることではなく、今できる事を丁寧にこなすことです。

ミスが起きた時にそれを瞬時に捨て去り、さらなる事故を回避して音楽を止めない姿はとても頼もしく映ります。
大人も子どももなく、その時の彼らは紛れもなくピアニストなのですね。
ピアノを教える仕事をしていて、その気迫や本気を見せてもらえるのが、何よりも大きな喜びです。
その背中に向かって「ありがとう」と思います。



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by kabopiano | 2017-09-29 16:14 | 発表会